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シノワプリュス

 「セブンイレブン北京がオリジナル化粧品をつくってくれるところを探している。やってみる気はありませんか」という話が来たのは昨年のこと。セブンイレブンと組む。今から思えば大胆であるが、楊さちこは二つ返事で応じて、セブンイレブン北京の大西副総経理に会いに行った。

大西氏との出会い

聞いていた情報は2つ。「大西氏はおでんや日本のカレーライス、おにぎり、お弁当を北京に根付かせた人」、そして「厳しいけれど、信頼の置ける人」。冷えたご飯は食べない中国人にコンビニのおにぎりが売れたのはすごいと思いました。厳しさというのはそれだけ仕事に真剣だから。わたしも誠意を持って真剣に取り組めばきっとうまくいくと思ったのです。
 わたしは4年ほど前から北京在住の日本人向けの情報誌に「楊さちこのきれいと元気の基本」を連載しているのですが、ご縁というのか、その情報誌は北京に住む日本人の大半が目を通しているので、大西氏もわたしのことをご存じでした。感心させられたのは、初対面で「化粧品の知識はありません」と言っておられたのが、2回目にはきちんと勉強したことが分かる質問をされたこと。そして「わたしのコンセプトは『体の内と外からのきれい』なので、つくるのであれば、女性がいつまでもきれいで元気でいられるためのすべてを網羅したい。化粧品といってもメークアップ用品でなく、肌が自分の力できれいになっていくスキンケアラインをつくりたい」と話したら、すぐ賛同してくださったこと。とってもうれしかったのを覚えています。
この気持ちがあればきっとできる! と思いました。
 それからわたしは、コンセプトシートを気の遠くなるほど何度も作り直しました。商品イメージを固めるために、まずブランド名を考えることにして、制作会社の人たちといろいろな名前を考えていきました。セブンイレブン北京限定であること、中医美容学の考えに基づいていること、中身もパッケージもすべて中国製であること、アジア人女性のためのものであることなどが連想できる名前でなければならないこと。そして決まったのが「chinois plus(シノワプリュス)」。
 北京だけでなく香港、大阪、東京でも購買対象である女性にアンケートを取ったり、通いそうな場所に出向いて観察を繰り返していきました。「体の内と外からのきれい」に必要なアイテムをピックアップして、スキンケアラインづくりに取り組んでいきました。各国の美容雑誌、皮膚学や美容学の文献、 化粧品カウンターのパンフレットなど、とにかく集められる限りのいろいろな資料を集めて読み込んでいきました。
 次に考えたのが、オイリースキン、ドライスキンなどの肌質では分けないベーシックアイテムづくり。なぜならば、バランスが取れた肌にすることが一番大切だから。そのためには肌細胞が元々持っている水分、 油分を生み出す機能を回復できるようにすればいいのです。
 シミ、シワ、毛穴、ニキビなど、人それぞれに異なる肌の悩みを解決するパーソナルケアアイテムづくり。さらにスペシャルケアアイテムとして週に数回か使うもの、忘れがちだがきちんと取り組むべきハンドケアアイテム、素顔だと恥ずかしいという人のための特別仕様のファンデーションなども考えました。各アイテムをピックアップして、美肌成分、 感触、におい、使いやすさなど、スキンケア用品に欠かせない内容を、 大学や研究所、工場の研究員と共に研究し始めました。

北京の気候と保存面での挑戦

 セブンイレブン北京のオリジナル化粧品の開発を手掛けることになり、「chinois plus(シノワプリュス)」というブランドを提案。
 北京の夏はとても暑くて汗だらだら、脂ぎとぎとになる。冬は木枯らしぴゅうぴゅうで潤いが奪われる所。肌にとってはうれしくないことばかりです。だからスキンケアアイテムの第1条件は、夏べとつかず冬かさつかず、肌に必要な潤いをきちんと与えること。この過酷な気象条件に耐えるアイテムをつくったなら、世界中どこでも通用しそうです。しかもセブンイレブン北京の店舗に何度も足を運んで、外国人客の多さに気がつきました。旅行者であれ在住者であれ、帰国してからも使えるグローバルスタンダードのアイテムが求められます。そこで、気候によるテクスチャーの違いを実感するため、わたし自身が出張時にサンプルを持ち歩き、そして成分を調整していきました。
 次に保存方法を考えました。まず温度。季節による寒暖の差の激しい北京ですから、常温(15~20度)で保管すればいいかなぁと思いながら店内を歩いていると、バナナを売っているのです。そうだ! 倉庫ではバナナと同じ場所に保管してもらおう。店舗は24時間営業しているので、室温が一定しているから大丈夫。それから保存料。私はなるべく天然成分がいいと思っているのですが、100%天然成分で水気を含んだ製品は扱いづらいもの。手を洗っていないなど、ちょっとしたことで菌に汚染されてしまいます。だから必要最低限の防腐剤を入れることにしました。この防腐剤は日本で歯磨き粉などに使われているものです。
 試行錯誤の末、成分、におい、使い心地、その効果・効能など、内容としては納得のいくものが出来上がりました。

「中庸」という考え方から生まれたシノワプリュス

中庸とは、『考え方・行動などが一つの立場に偏らず中正であること。過不足がなく、極端に走らないこと。また、そのさま。』をいいます。(大辞林)
私の解釈では、中庸とは「単に極端を避けるということより、むしろ、全てにおいて、バランスがとれている状態」、つまり「ちょうどいい加減の状態」だと思うのです。
肌にもちょうどいい加減の状態というのは存在する。極端に走るのはとっても簡単。
例えば、「肌がべたつくから、脂分を取ろう」と考え、洗浄能力のとっても高いものを使うとか、「肌がカサカサするから、保湿能力の高い化粧水や美容液を使う」とか。そしてこういうものは、使ってスグに肌がさっぱりしたり、しっとりしたりしてしまうこと。そして、それを感じたときに、「コレはとっても効く!」と思ってしまうこと。
例えば、怪我をしたときなんかに薬を塗ったとたんにそれが治るなんてことありますか?
怪我が治るというのは、その部分の細胞が自分のチカラ(自己治癒能力)で修復するからなのではないですか?
肌の細胞はじつはとってもカシコイのをご存知ですか?
肌の細胞は、「水分が足らないな~」と思ったら水分を補給し、「脂分が足らないな~」と思ったら脂分を補給する能力を持っています。「洗顔後の肌のツッパリが嫌だからマイルドな洗顔剤を使うの」とか、「洗顔後の肌のつっぱりが嫌だから、すぐに化粧水をつけるの」というひと、多いと思うのです。
一般的にマイルドな洗顔剤には、油汚れを取る機能と保湿する機能が備わっています。水を使って洗うので、水溶性の汚れも脂溶性の汚れも取れる上に保湿成分が入っているので洗顔後も肌はつっぱりません。また、洗顔後すぐに化粧水を肌に与えると肌はつっぱらない。
でもそれって、肌細胞が本来持っている能力を退化させるだけでなく、狂わせることになるのではないでしょうか? だって、洗顔でしっかり脂分がとられてしまうことによって肌細胞は、「あっ。脂分が足らない。はやくつくらなきゃ!」って思うし、肌を外から無理やり保湿することによって、「水分は足りてるから、つくらなくってもいいや!」って思ってしまうから。
だから、最近の女性の肌質が、「肌の表面はべたべた、内面はスカスカに乾燥している」というオイリードライスキンになってきているというわけです。
洗顔後に肌のツッパリを感じて、カシコイ肌細胞は脂分不足と水分不足を察知し、まず自己治癒能力でスキンケア。そして、老化し始めている肌は肌細胞の水分、脂分だけでは足らないので、足らない分だけ、外から補充するためにスキンケアをする。
私にとってスキンケアアイテムの良し悪しの決め手は、「そのスキンケアアイテムがどれだけ肌を作るか」なのではなく、「どれだけ、肌が自分のチカラで動けるようになるのを助けることができるか」です。肌が自分のチカラできちんと動ける理想のちょうどいい加減の状態であれば、肌質も整い、肌トラブルもなくなってくるのではないでしょうか?
(もちろんスキンケアだけで理想の肌状態を完璧に得ることはできません。体の外からだけでなく、体の内側の状態もちょうどいい加減にすることが必要になるというのが前提にもなるからです。)
また、『ちょうどいい加減の状態』を保つためには、「ちょっと待つ」と言うことが大切。
洗顔後タオルドライした肌がツッパリを感じなくなるまでちょっと待つ。(最初つっぱっていても、しばらくすると肌が自分で水分を補給する)、化粧水を塗って肌に浸透するまでちょっと待つ。とにかくスキンケアアイテムが、肌の上で混じらないようにそれぞれが浸透するまでちょっと待つ。
わたしが「シノワプリュス」で最後に心を砕いたのが、それぞれのアイテムの使用適量。説明書には文章で、パッケージには図でそれぞれ記しました。ちょうどいい加減の肌を手に入れるためには、必要不可欠だったからです。